中和だ、中和

何はともあれ、薄毛で悩んでいるのである。

ここ数年、自らの毛の薄さに、ジャパニーズホラーの如く忍び寄る得体の知れないものを感じずにはいられない。鏡の前に立つ度に、どう誤魔化そうかと、費やす時間が増える一方なのだ。

そもそも、毛が薄くなるのは何故なのだ。

数年悩んだ挙句、辿り着いた一つの結論は、遺伝だ。脈々と受け継がれてきた命のバトンの中で、母の胎内にて生を授かった自分は、ソレを受け継いでしまったのだ。

しかし、あまりにも理不尽だ。キチンと整理されたテーブルの上に、与えられたカードを並べた際、「薄毛」の手札がある事に何故気付かなかったのだろうか。いや、そもそも、そんな交渉の場すら無かった。「はいよ」と渡された荷物の中に「薄毛」と書かれたちっちゃな紙切れが、奥の方に丸かっていた。それに気付いたのが、数年前。もう、どうにもなりゃしないのであるわけで。

リアップという、最終兵器的な、北朝鮮における核兵器的な代物にすがった時期もあったが、結局はダメだった。やはり、遺伝という抗えない物の前には、核兵器でも歯が立たなんだ。恨むぜ、水谷豊。

そして、厄介な事に、このバトンは息子も受け継がざるを得ないのだ。

息子よ、なるべく毛深い伴侶をめとられよ。中和し、この系譜を絶たれよ。

毛同様、内容も薄いので、文字の多さで中和してみた。